過去の大会
2016年度実績
谷原秀人が大会2連覇を達成。総武CCで開催されたトーナメントでの3勝、自身初の年間3勝、プレーオフ2連勝と数々の記録を更新し通算14勝目を飾った。
谷原秀人が大会2連覇を達成。
第1ラウンド
狭いフェアウエイ。深いラフ。小さなグリーン。ホールをセパレートする松林。難攻不落の異名を持つ大会舞台、総武カントリークラブ 総武コース。メジャー級のコースセッティングが選手を苦しめる。
96選手が出場した第1ラウンドでアンダーパーをマークした選手は21人。6アンダーのベストスコアをマークしたW・J・リーが単独首位に立った。
「ショット自体は先週から良かったり悪かったりしていて、今日も同じような感じでしたけれど、パットは良かったと思います。最後にJTカップに出たいと思っているので、優勝などの身近なゴールは考えずに、堅実なプレーをして結果がついてくればいいと思っています」(W・J・リー)。
2打差で今平周吾、冨山聡、任成宰 (イム・ソンジェ)、朴相賢 (パク・サンヒョン)が追いかけ、さらに1打差の3アンダー・6位タイには藤田寛之、池田勇太ら4選手が着けた。
大会ホストプロの宮里聖志は1オーバー・34位タイ、同じく宮里優作は4オーバー・60位タイ発進となった。「ラフを避けられたならスコアメイクができるコースセッティング。今日はバーディーチャンスらしいチャンスを着けられなかったのが悔やまれます。ショットの精度を高めて明日の巻き返しに備えます」と宮里聖志はドライビングレンジに直行した。
宮里優作は「ティーショットをコントロールすることが出来ませんでした。ティーショットのイメージは良いのに体が思うように動かず、スイングがバラバラになってしまいました。今日のイメージを捨てて、明日また良いイメージで臨みたいですね。大勢のギャラリーに見守られながらのラウンドでしたが、明日は良いプレーを見せられるように頑張ります」と誓っていた。
第2ラウンド
前年大会覇者の谷原秀人が通算8アンダーで首位タイに浮上。賞金ランキング1位の池田勇太と稲森佑貴がともに65をマークして谷原と首位の座を分け合い、決勝ラウンドに駒を進めた。
前年大会覇者の谷原秀人が通算8アンダーで首位タイに浮上。賞金ランキング1位の池田勇太と稲森佑貴がともに65をマークして谷原と首位の座を分け合い、決勝ラウンドに駒を進めた。
通算6オーバー・57位タイまでの計64選手が決勝ラウンドに進出。大会ホストプロの宮里聖志は通算7オーバー・65位タイ、宮里優作は通算8オーバー・69位タイで予選通過を果たせなった。
「ショットがバラバラで距離感が合いませんでした。予選カットラインを6オーバーと想定し、耐えるゴルフをしたのですが、バーディーチャンスを作り切れなかったのが悔やまれます」とは宮里聖志。
「パットもショットも結局(本調子に)戻せませんでした。残念です。ホストプロとして初めての予選落ちなのでショックです」と肩を大きく落としたのは宮里優作だ。
だが、明日のチャリティーオークションには出演し、クラブをマイクに持ち替えて大会の裏舞台で盛り上げに貢献する。
第3ラウンド
大会3日目最終組は通算8アンダー首位タイの谷原秀人、稲森佑貴、池田勇太の3人。前年大会覇者の谷原は、スタートホールの1番パー4はドライバーショットがフェアウエイ左ラフに捕まった。 2打目は花道、3打目のアプローチを寄せ切り、パーセーブの発進。前半は8番ホールでのバーディーでスコアを一つ伸ばし、ハーフターンした。
「(稲森は)飛ばないけれど、曲がらない。フェアウエイウッドはピンを刺して行く。全体的にうまいから(22歳で)シードも獲れていると思う。緊張している様子もなく、頼もしい。(池田)勇太は(3人の中で)一番ショットが良いし、球も飛んでいる。あとはパットが入れば(スコアを)伸ばしそうな雰囲気がある」と谷原はホールアウト後、一緒に回った二人を評した。
後半は4バーディー・1ボギー。結局66でフィニッシュし、通算12アンダーまでスコアを伸ばしたものの、谷原の表情は浮かない。
前日は暗くなるまで練習場でボールを打ち続けた。だが、その成果が結びついてのスコアではないという。
「(練習して)逆に悪くなってしまった。アイアンショットを右に打ち出してしまう。原因がわからないから、それを探してから」と最終日のゲームプランは明確に定まってはない。この日は「1打2打離されても、ショットが復調すれば追いつけるだろうと期待しながら回っていました」と谷原。10メートル、15メートルのバーディーパットが入っての好スコア。「粘りがなければ5オーバーくらい言っていたと思う」と弱音のような言葉もついた。
明日も再び同メンバーでの最終組ラウンド。果たしてどんな試合展開になるのか。
「自分を予想するのは無理ですね。ほかの二人は予想できますが。僕は崩れる要素がてんこ盛り、苦しい戦いになりますね。(対策としては)今日のような我慢ができたらいいと思います」。
賞金王争いの渦中にいることも頭にはない。ショットの復調が急務。たとえそれが今大会で間に合わなくても粘りのゴルフで戦う。野球に例えるなら完封試合ではなく、1点差の接戦勝ちでいい。大会2連覇、優勝シーンを待ち受けるファンのためにも谷原は粘りのゴルフに徹する。
最終ラウンド
「諦めの悪い男ですね」。谷原秀人は自らをそう評して、ニタリと笑った。
通算12アンダーの首位タイ、最終日最終組でスタートした谷原はショットが復調しないまま大会3日間を過ごした。
納得できないショットながらも持ち前のアプローチの巧みさとパットのうまさでスコアメイクし続け、首位の座についていたのだった。ホールアウト後、練習場でショット不振の原因を追い求めたが、予選ラウンドでも決勝ラウンドに入ってもわからずじまいだった。
それでも多くの球を打ったことで少しずつわかりかけてきた。しかし、練習場で納得しかけてもコースではそれを再現できない。「崩壊しそうな」プレーが続いたが、谷原はそれでも踏ん張った。
4打差で谷原を追う池田勇太が順調にスコアを伸ばし、ヒタヒタと足音を立てながら近づいてくる。谷原は前半スコアを一つしか伸ばせないでいた。二人の差は2打に縮まり、勝負の行方を左右するサンデーバックナインを迎えた。
谷原は、10番ホールで痛恨のダブルボギーを叩き、12番のパー5で池田が会心のイーグルパットをねじ込んだことで順位は逆転。残り3ホールの時点では、2打差を追う立場に変わっていた。
それでも谷原はへこたれない、弱音を吐かない、あきらめない。そんな自分がいた。前々日、感動するドキュメンタリー番組をテレビで見た。大好きなプロ野球・広島カープを今季で引退した黒田博樹投手の生きざまをまとめた番組から、黒田投手の「男気」を知り、感化されたのだった。
「もっとギャラリーを感動させるプレーをして喜ばせなければいけない」。それがプロゴルファーの自分にとっての使命だと改めて感じさせられたのだ。だから、たとえショットが曲がっても「リカバリーしてのパーセーブ」でギャラリーが一人でも喜んだり、感動したりしてくれれば本望だと思った。
最終日、残り3ホール。「がんばれ! 谷原」というギャラリーからの声援が聞こえてきた。「あと3つバーディーを取るぞ!」。谷原は帯同プロキャディーにそう告げた。同時に、自分にも言い聞かせたのだ。
今年7月の日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯 。谷原は最終日最終組でスタートした。首位とは3打差を最終ホールで追いつき、プレーオフの末に下して自身初の国内メジャータイトルを獲得している。絶対にタイトルを譲れない、負けられない。だから、最後まで勝利を諦めない。その一心でプレーしての逆転優勝だった。
「メイクミラクル」。谷原は、切羽詰まったことで、開き直った。どんなショットであろうとバーディーチャンスを作って、それをねじ込む。残り3ホールの勝負。
16番で1.5メートル、17番で2メートルのバーディーパットを沈めた。その差、1打。最終ホールで4メートルのバーディーチャンスにつけ、ギャラリーから歓声が沸き上がる。「神がかっている」。そんな言葉もギャラリースタンドから聞こえたほどだ。
惜しくも3連続バーディー・フィニッシュのドラマを演じてくれなかったが、通算12アンダーで池田と首位を分け合い、勝負はプレーオフに持ち込まれた。
74ホール目に谷原は下り6メートルのバーディーパットを決めて、池田を下し、大会2連覇。総武CCで開催されたトーナメントでの3勝、自身初の年間3勝、プレーオフ2連勝と数々記録を更新したのだった。
「あきらめないことの大切さを改めて実感しました。ギャラリーの皆さん、楽しかったですか!?」と谷原はツアー通算14勝目を飾って、自身の喜びよりもギャラリーの気持ちを最優先させていた。